くす玉から出て来た紙には【颯斗、誕生日おめでとう!】の文字。











そうだ。







今日、颯斗の誕生日だ。








私何も用意していない。






「お前ら、凝ったことしやがって。じゃあさっきの店で様子がおかしかったのは、ドッキリってオチか?」










涙ぐんだ様子で颯斗は言った。











気づいていたんだ。喫茶店のみんなの様子がおかしいこと。













「そういうことだ。どうだ。感動しただろ」













胸を張ってどや顔で言う春馬に、颯斗も強がって「感動なんてしてねえよ」と強がった。













でも、どうして私も舞台に上げたんだろう。













颯斗の誕生日を祝うなら、颯斗だけで良かったんじゃないの?













「優杏。ちょっと良い?」













「え、うん」













桃花に後ろから声を掛けられて舞台の裏側に連れて行かれる。













「これ、渡して欲しいんだ」













渡されたのは、少し大きめのスパイクだった。これ、もしかして……。













「颯斗、に?」













「他に誰がいるのよ」













だよね。でも、どうして私?













「どうしてわざわざ私に渡すの?桃花か春馬が渡せば良いのに」













私がそう言うと、桃花は大きなため息をついた。
な、何かおかしなこと言った!?















「あんたが渡した方が価値あるに決まっているでしょ?良いから早く渡して来て」













プレゼントは気持ちが籠っていれば誰が渡しても一緒と思うけど。それに、春馬や桃花が渡しても価値のあるものになっていると思う。













そう思いながらも袋を持って、舞台に上がった。













「お、来たな。颯斗、これ俺たちからのプレゼントだ」













マイクでそう言った後、私の耳元で「颯斗に渡して」と言われたから颯斗にスパイクが入った袋を渡した。













「何?」
















「スパイクだよ。サッカーの」













再びマイクを使って言う春馬に、颯斗はキョトンとしていた。













「俺、スパイクどころか靴もまともに履けないんだけど?」














「バカ。早く帰って来いってこと。病気治して歩けるようになったら、サッカー部戻って来いよ。俺たちずっと待っているから!」
















颯斗の目に段々涙が溢れていくのが分かった。

















もちろん、私も泣いている。


















だって、私の知らないところで、春馬がこんなことを考えていたなんて。



















「待っていろよ。一秒でも早く戻ってお前らを追い越してやるからな!」




















泣きながらそう言う颯斗に、歓声が上がる。


























一秒でも早く。





この言葉に一体どれほどの気持ちが込められていたんだろう。























私たちには分からない。























でもね、颯斗。
























私たちはいつまでもあなたが帰ってくる日を待っているからね。
























いつまでも、ずっと。