店長が「冬雪も好きなのか?」と少し楽しそうにしながら話しかけてきて、初めてずっと佐藤さんを見ていたことに気づいた。
ビクッとはしたが、声は出なかった。
「なんでそうなるんですか。」
「だって、さっきからずっと春を見てるぞ?」
「どんな人なのかなって思ってただけですー。」
「手強いぞ〜、春は。」
完全に私が佐藤さんのことを気になっているという体で話す店長をガン無視して「名前、春っていうんですね。」と話題をそらした。
「あ?あぁ、そうそう。」
春、かぁ。
絶対春に生まれたんだろうな。
わかりやすい。
私と同じだ。
「冬雪も春のファンかー。若いっていいなー!」
ファンって。アイドルじゃないんだから。しかも、そうそう容易くファンなんて言いたくない。佐藤さんのこと全然知らないんだし。