いつもカウンターに座る佐藤さんは、黙々と読書をするのだが、この日は私に話しかけてくれた。
「最近入った子だよね。大学生?」
「あ、はい。」
「名前聞いてもいいかな?」
「青山冬雪です。」
「冬雪ちゃんって言うんだ。いい名前だね。」
「ありがとうございます。」
「前から気になってたんだけど、中々声をかけれなくて。でも、今日こうして話せて嬉しいよ。」
「私も嬉しいです。」
私を気にしていただなんて。
まさか、そんな風に思ってくれているとは思っていなくて、少しテンパった。
だからか、いつもならもう少し上手に会話が出来るのに、この時はこれで精一杯だった。