「ふざけんじゃねーぞ...っ、どいつもこいつも。
ほんと、自分勝手すぎて嫌になる」


坊主頭の男の頬に、圭の拳の跡がつき。
白目を向いて気絶している。


男が倒れている姿を見下ろしながら、圭は自分の胸の内を明かす。



「全部積み上げてきたもんが、"今"無くなったんだ。
それならよ、俺だって好きにやったっていいじゃねーか。

何が黙って見てろ、だよ流。夜季やめたってな...お前は俺のダチなんだろ?
じゃあ困っているお前に手を貸して当たり前じゃねーか...。

親よりも...ずっとお前の方が、俺の隣にいてくれたんだから」



圭の思いを聞いて、私の心に何かが響く。


圭の家は金持ちで、まったくと言っていいほど圭に関心がなかった。


圭が一人暮らしを始めても、何も言わずに家賃や生活費は出すが
いくらお金を使っても、怒られたりはしない。


そんな本音を語れない家庭で育った圭は、自分とどこか似ていて、私は彼を手放せなかったんだ。



振られても好きだった。


ーー流に出会うまでは。