勢いを増す拳と、どこにどう動けば相手の拳が避けられるか分かっている足。

ーーバキッと鈍い音がした。


先に殴られたのは流。


だけど一瞬フラついた体を下半身の力だけで耐え、そのまま突き出した拳で若葉の綺麗な頬に、1発返した。



「......まだやる気か?」


言いながら、流は尻もちをついた若葉の前に立つ。



「ハハッ......やっぱり夜季の総長は強いな」


「......俺はもう、」


夜季の総長ではない。と、言葉を続けようとした流の目線の先には私がいる。


坊主頭の腕が、私の首を軽く絞める。



「調子に乗るなよ神庭ァ。
こっちは人質がいるんだ、そんな状況で若葉さんを倒そうとしても出来ないだろ?」


坊主頭が流を煽る。



「悔しいけど、手抜いてんだろ?
.....でもさ、それって逆に命取りだから。」


若葉は立ち上がり、人の靴の裏にくっついていた砂が、地面に集まっていて、少量の砂を握りしめ、流の目に向かってかけた。


「...っ」


一瞬の出来事で、油断していた流の視界が奪われる。



どこまでも汚い若葉は、その隙に流の腹を蹴り、そして殴った。