「若葉雅治(わかば・まさはる)。
なぜお前がここにいる 」
1本足を前に進め、流の隣に立つ圭が
夭嵐の総長を睨みながら言う。
「ハハッ...副総長まで居やがる。
これは夜季を潰すチャンスかもな」
手の手根部分を額に押し付け、不敵に笑いながら、夭嵐の総長である若葉はそう口にした。
「そーいえば...下っ端か何かは知らないけど。
殴ったら勝手に気絶したから、後で片付けておいてね」
導くようにして、目線を後ろに向ける若葉。
嫌な心臓の音が、体内に響く。
シャッターは開けっ放しで、赤く濁っていた夕日は沈み、辺りは暗くなっていたが。
誰かの足先が、視界に入った。
考えたくもなかったけど、その想像は現実となる。
「山崎...くん...」
建物で上半身が隠れている体は、足だけが突き出していて、見覚えのある靴に、山崎くんだとすぐに分かる。
そもそも外には山崎君しかいなかった。
そうなると、若葉が着ている特攻服についている返り血は、山崎君のものなのだろうか。
胸の奥がヒヤッと冷えていくのを感じる。