坊主頭はわざとらしく私の手首を軽く捻じる。
その瞬間、手首からーーズキッと痛みがやってきて、驚いて目を見開くと。
「俺のもんに...触んじゃねぇって...言ってんだろ...ッ」
今にも手を伸ばして、坊主頭に殴りかかりそうな流は、自らの今にも切れてしまいそうな理性を抑えるため、自分の左手で力強く、右腕を掴んでいる。
...どうしよう。
また流に迷惑をかけてしまった。
だって後ろから敵が迫っていたなんて、そんなの気づくわけないよ。
ここは夜季の倉庫だよ...?
敵対する暴走族同士でも、危険をおかしてまで敵の倉庫に襲撃してくるなんて出来ないはず。
なのに、なんで。
坊主頭のこの男は、たった1人で夜季の倉庫に侵入してきたの...。
「...っ!?」
1つ嫌な予感が頭をよぎる。
見開いた目をギョロりと横に向け、身動き取れない体を、視界だけでもと後ろの方に一生懸命いかせると。
「久しぶりだね、紬ちゃん」
1人の男が、揺れ動く影と一緒に存在を示す。
ベッタリと血が着いた白い特攻服は、まるで花が咲き乱れているかの様に芸術的で、私の不安を煽る。
なんで...この男がここにいるんだろう。
もう顔を見ることさえ嫌だった。
だってこいつは...この男のせいで、私は流と距離を置かなければならなくなったのだから。
夭嵐の総長。
名は確か......。