「ふーん、これが夜季の総長。神庭流の女か。
可愛いけど気が強そうだ」
坊主男は私の口を手で押さえたまま
わざとらしく靴を地面に擦り付ける音を鳴らせ、倉庫の中に入ってきたことを流と圭に知らせる。
音に気づき、反射的に顔を倉庫の出入口に向ける2人。
「なっ...!?」
「...ムギっ!??」
圭と流の驚いた顔を見て、男は今にも暴れだしそうな私を押さえている手に、力を込め、より一層流と圭に焦りを与える。
「誰だテメェ...。
その汚ねえ手、今すぐ退けねぇとぶっ殺すぞ...」
流の猫目がいつもよりキツく、夜に怪しく存在を目立たせる三日月の様に、男を睨む。
「夜季の総長も、やっぱ女のことになると余裕ねーな」
坊主頭の男は、喉仏を上下させ、余裕そうに笑う。
「離せって...言ってるのが聞こえねーのか?」
ーーパキパキと、流の手から鳴る、指の関節の音。
その足先をこちら側に向け、流が私と坊主頭の方に向かって、1歩前に体を動かせると。
「...俺に近づくのはいいけど、そのせいでビックリして、この女の骨折っちゃうかも」