この場にないはずの時計の針が、チクタクと時間を焦らすかの様に聞こえてくる。




緊張感が走る空気の中で、2人は一体何を思っているんだろう。




無意識に息を止めて待っていたその時。




「紬って、そんなに魅力的な女か?」



突然、圭に自分の名前が呼ばれ、驚きついでに心臓が跳ねる。




もう、流とは戦う気など起きないくらいに、圭の言葉は脱力しきっていた。




幅を取るのを恐れてか、特にこれといって何も置かれていない夜季の倉庫の中で、1番目立つのが白い冷蔵庫。




その冷蔵庫から冷えたお茶が入っているペットボトルを2本取り出した圭が、一本流に向かって投げた。




それを流は受け取ると、キャップを外して口をつけ、喉に潤いを与える。





「ああ。ムギはいい女だぜ?俺がいないとすぐ泣くところとか、すんげー可愛いの」





それって悪口じゃない?と。盗み聞きしているせいか、流に文句の1つも言ってやれない。