「紬ちゃんって、強いね」
もうこれ以上、私と話すことは無いと。
何かを諦めたような口振りで、ポケットからタバコを取り出しライターで火をつけ始める山崎君。
圭の気持ちを汲(く)み取ってあげたいが
流には何かと借りがある山崎君。
圭の気持ちを優先させてあげることだって出来たのに。
山崎くんはしなかった。
したのは、今私とこうして喋る事で、時間稼ぎをしている様にも見える。
どっちの味方でもありたい。
山崎くんの心境は、流を敵視してたあの頃とは
まったく別のものになっていた。
「ありがとう、山崎くん」
男の世界に足を踏み入れることが、どれだけ危険なことか。
女が口を出すのは間違っていると思う。
けど、私だって、複雑に絡まった糸のように。
圭とも...そして、流との切っても切れない関係があるから。
1度吐いた息を、吸い戻すように。深呼吸をした。
錆びついたシャッターを、決断した自らの手でこじ開け。
隙間から放たれる、砂埃に目を痛めた視界の先には。
鈍い音を響かせながら、殴り合っている流と圭の姿が映し出される。