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「何を見ても、自分の"せい"にだけはしないでよ、紬ちゃん」


しばらくして、足の踏み場が悪い山道を突破した所にある、雑木林であまり目立たない夜季の倉庫に着いた。




バイクからすぐに降りて、居ても立ってもいられずに倉庫のシャッター前まで走ると。


ヘルメットを外して、心を落ち着かせようと息を吐く山崎君が、意味深な言葉を言うから。



さっきから、胸がザワついてしょうがない。




「山崎君は...私のせいで、流が夜季を辞めようとしていることを知ってるんでしょ...?」




そう言うと、山崎君から分かりやすく目を逸らされ、思いっきり傷ついている自分がいる。



向き合うには、少し、覚悟が出来ないままでいた。



だけどそれは、無理矢理私に覚悟を決めさせ、現実を直視させる。




「俺は、...いや。下っ端の奴らや俺はまだいいんだ。
神庭のことは総長と認めてはいるが、仲はそんなに深いものではないから、神庭の決めたことに口は出さない」



言いながら、逸らした目を恐る恐る私に合わせる山崎君。




「だけど...圭さんは、違う。
圭さんは神庭に、絶対的な信頼を置いている。
神庭は...圭さんの憧れでもあるんだ。」



「...」



「そんな憧れが、自分の今いる世界から遠ざかろうとしているんだ。
そりゃあ誰だって、止めるだろ...?」