手段もなにもないくせに、どうやって夜季の倉庫まで行こうかと悩んでいると。
少しだけ目線を上にあげただけで、視界に入るオレンジ色の夕日が眩しくて、すぐに視線を下の方へと落とす。
すると。
エンジン音を鳴らしながら、出し抜けに私の横を通るバイクが
ふわりと私のスカートを煽って、風と一緒に3歩手前で止まった。
バイクに乗っている男が被っていたヘルメットを取って、少し汗ばんだ顔を晒す。
「紬ちゃん...!やっと見つけた!!」
バイクに乗って焦りと不安を漂わせながら現れた人間の正体が誰だか分かった瞬間。
こっちの驚いた反応なんか構いやしないと、勢いよく私の名前を呼んだのは山崎君だった。
「山崎くん!?なんでここに...っ」
「話は後!!いいから乗って!!」
「はあ!?なんで??なにかあったの!?」
山崎君の焦っている顔を見て、ただ事ではないと、嫌でも分かってしまう人間の察し能力が、こんな時に限って嫌になってくる。
もう少し自分が鈍感だと、不安なんか感じなくて済んだのに。
「もしかして、流になにかあった...?」
山崎君が被っていたヘルメットを、半ば強引に私に被せた後、バイクの後ろに跨らせる。
流のことについて、聞いても山崎君からの返事はなかった。
だけど、山崎くんはバイクを発進させると同時に
「紬ちゃんしか、もう止められる人はいないから。」
意味深なことを呟かれ、私の心臓はバイクのエンジン音に呑み込まれながらも、しっかりと鳴っていたのが心の奥底で伝わってくる。