「素敵なアイデアですねっ」

(きっと、花や生き物を大切にする優しい人なんだろうなぁ)

思わず感心してしまう。

この店員さんの子どもなら、自分と歳もそう変わらないのではないだろうか。是非とも、お友達になりたい位だ。

「それで、今でもその子が自主的に作ってくれてるんです。だから、お嬢さんの話をしたら、きっと喜びますわ」

店員女性は、僅かに母親の顔を見せると「ありがとうね」と微笑んだ。


そうして遥は二種類の花のしおりを購入すると、その店を後にしたのだった。



そんな遥を店先まで見送った店員は、店内を振り返るや否や腰に手を当てると呆れたように言った。

「ちょっと。何だっていうの?突然、隠れたりして…」

口を尖らせながらも中へと戻ると、奥に向かって息子の名を呼んだ。

「こらっ蒼っ?」

すると、奥の物陰から一人の少年が姿を見せる。


「悪い…」


蒼は遥が帰って行った方向を気にしながらも、どこか遠い目をした。

「何か顔を見せたらマズイことでもあるの?今のお嬢さん、あんたの知り合い?」

溜息を吐く母親に、蒼は苦笑いを浮かべた。

「ああ、まぁ…。知り合いっていうか…。昔の遊び友達、だな」

別に顔を見せてマズイことはないのだが、反射的に隠れてしまっただけだった。

「可愛いお嬢さんじゃない。あんたのしおり、気に入ってくれてたみたいよ」

「うん」

それには、蒼自身が一番驚いていた。

まさか、あのしおりを持って遥がこの店を訪ねてくるなんて。