制服を着た男女が居る。
二人は何かを叫びあっているようだった。

「あんたに何がわかるのよ!」

女は、傷んだ茶髪を振り乱して声を張り上げる。泣きそうに目を潤ませて口を歪ませている。

「私は、あんただけが好きだったのに何であんたは……」

女は、言葉を最後まで言わずに顔を伏せた。手で顔を隠し、嗚咽をしてコンクリートを濡らしていた。
男は、呆れたように深い溜息を吐くと、ポケットからスマートフォンをだして女に画面を見せてきた。

「こいつ、俺の新しい彼女」

画面に映っていたのは、見知らぬ女だった。可愛らしく此方にピースサインを送ってきていた。
女は、それを見て眉間にしわを寄せた。
心の中にあった怒気が、抑えきれないほどに膨れあがって爆発した。
般若の形相で、男の持つスマートフォンを引ったくると画面をコンクリートに向けて、思い切り叩きつけた。

「なにするんだよ!」

「五月蝿いわね!あんたなんか居なくなってしまえ‼」

そう言って、女は何処かへと走り去って行った。
その後ろ姿を黙って見つめたまま、男は怒気で溢れていた顔を緩める。そして、口を結んで眉尻を下げた。
目から溢れてくる水を必死に拭いながら、下手な笑顔を浮かべる。
走り去る女の後ろ姿を見つめたまま、彼は小さな声で呟いた。

「…ありがとう」

頭上から、無数の鉄パイプが降る。
悲鳴が沸き上がり、笑い声が途絶える。

男は、笑顔を浮かべたまま血渋きをあげた。