カランカラン…
「いらっしゃ…あ、灯さん。いらっしゃい。」
『こんにちは、マスターさん。』
今、私の目の前にいるかなりイケメンな男性…霜月ルカさんが経営している夜専用のBAR。
「久しぶりだね。全然来てくれなくて寂しかったヨ。」
『…色々と忙しかったからね。でも思ってもないこと言わない方が身のためだよ?』
「あはは。…あ、お客様、今日は何をお飲みになられますか?」
『…ルカさんのオススメでいいよ。』
「そう?分かった。じゃあ俺の新作のカクテル、飲んで?」
『いいよ。美味しければ。』
「言うな〜(笑)」
彼はこのBARのバーテンダー兼情報屋。いつもこの近辺の情報を持っている。
「そうそう、最近ね、急激にランク上がった子が多いんだよな。」
『ランク…?…ああ、ハッカーの。』
「そうそう。」
シャカシャカシャカシャカ
この地域にはハッカーランク制度が毎年一回開催される。大体二つに分かれていて、
一つ目は一般的な、中小企業の情報を覗ける範囲のランクがジーニアス・ハッカー(通称Jハッカー)。
二つ目はちょっと頭が良い、大企業の情報の覗ける範囲のランクがアルティメット・ハッカー(通称Aハッカー)。
この二つが一般的なランクだけど、実はもう一つ、特別なランクがある。
それがパーフェクション・ハッカー(通称Pハッカー)。
パーフェクション・ハッカーは中々なれない。理由は三つ目。一つ目、全企業の情報を細部まで覗けること。二つ目、ある特定の人の防衛された情報と暗号化技術を一分以内に解くこと。三つ目、自分の情報が漏れないようにロックすること。四つ目、殺される覚悟があること。
一つ目は大体分かるだろう。二つ目のある特定の人というのは、審査員であるパーフェクション・ハッカーの誰かの情報を解くということ。三つ目は自分の情報を誰にも解かせないように厳重ロックをし、そのロックがパーフェクション・ハッカーに解かれた場合、パーフェクション・ハッカーにはなれない。
四つ目…私は殺される覚悟が一番大事だと思う。パーフェクション・ハッカーは危険な存在。それはいつでも大企業の裏事情を表舞台へ晒せるのだから。その技術を自分の会社などに使わせようと思われ、監禁されたりもするだろう。
下手したら殺される、パーフェクション・ハッカーは、この地域だけでも数人しかいない。滅多になれないレアモノだ。それでもパーフェクション・ハッカーになりたいという奴らはいる。
コト。
「…はい、どうぞ。」
『…ありがとう。…ランクが上がったってことは…まさか。』
「いや、まだAハッカーだよ。でも、もしかしたらなれるかもね。」
『…ホント、大変だね。Pハッカーは。』
ルカさんは言わずもがな、パーフェクション・ハッカーであり、
「…そういう灯さんもPハッカーの一人のくせに。」
私もその一人である。