何かに触れたのか、いきなり近付いて私の腕を取り、ソファーに押し倒した。
『……何。』
「普通の女はここで良い顔すんだけどよォ。」
『…普通の女…ね。』
「オイ、寿梨。」
「これ以上俺に指図するなよ、女ァ。…犯すぞ。」
一番最後の一言だけが、本気に思えた。でも、私は。
『…その前に貴方の急所に蹴り入れる。』
でもきっと、この人は本気じゃない。
「……女、名前は。」
『…?』
「名前だよ、名前。」
『…二宮灯。』
「…灯、灯な。…今覚えたわ。」
『…さっきも言った。』
「覚える気は無かった。でもお前は…面白れェ。」
『…そう。』
「…灯。」
『何?』
「今日はここに泊まれ。」
『…!?良くない…!』
「…命令だァ、逆らうんじゃねェぞ。」
そしてそのままどこかへ消えた。後々三葉が…帰り送るからと言ってくれた。
三葉…夢宮三葉ユメミヤミツバは、私の幼馴染。二個上のお兄ちゃんのような存在だった。
『…三葉、なんで居なくなったの。』
「…言えない。ごめん。」
『…そう。わかった。』
悲しそうな表情で、笑っていた。あの時と同じように。