彼が去るなり、里沙は私の元へ駆け寄ってきた。


「ねえ、さっきの子、どうしたの?」

里沙は怪訝そうな顔をして、彼が歩いていったもう誰もいない廊下を見ながら言った。



「あぁー、私が自己紹介の時に話を聞いてなくて、その時に彼が何言えばいいか教えてくれたからお礼言ってたの」

私は、はははっと笑った。





「・・・・ふーん?」

里沙のまだ怪訝そうな顔が治らない。



里沙は昔から勘が鋭いからなあ・・。




「ね、ねえ、里沙。里沙にとって【笑う】ってどういうことだと思う?」


「は?」

里沙はポカーンとした顔になった。
確かに、急な質問だったよね・・。


「私にとって笑うってのは・・。面白い時とか嬉しい時とかに自然に溢れてくるもの、かな。」


「・・・そうなんだ。」



私は、自然に笑っていなかったのかな?

辛そうにしてたのかな?

じゃあ、なんで辛そうに見えたのかな?



「ちょ、菜乃花?大丈夫?」

里沙は私の顔を覗き込んだ。


「ううん!大丈夫!さ、教室戻ろ!」