Basket Ball Club2〜ずっと大好き〜



重い足を一歩ずつ気力で運びながら自分の部屋に入る。


そして、ゆっくりと机の上に携帯を置く。

それと同時にまた携帯が激しく動き出した。


“ヴゥーヴゥー”

着信名は-秀二先輩-


さっきあんな切り方したから…どうしよう…

出るべき?出たほうがいい?


どうしよう…どうしよう…どうしよう!!!


うんっ!!出よう!!!

ちゃんと謝ろう!!


携帯に手を伸ばした時、携帯は動くのをやめた。


あー…止まった…もっと早く出ればよかった…。

何かもっと気まずくなっちゃうじゃん…。


携帯とにらめっこをしながら考え込む。


自分から掛けるべき?

謝らないとスッキリしないし…謝るだけでも…。



私は着信履歴の“秀二先輩”から発信のボタンを押した。





“プルループルループルルー”

コールが鳴り始める。


それと同時に私の鼓動も早くなる…。


“プルループルループルルー”

『未来っ!!』

2回目のコールで先輩は勢いよく電話に出た。


「はい、さっきはいきなり切ってごめんなさい。」

『どうした?何があった?』

「あ…いや…」

『俺には話せないことか?』

「いや…そういう訳じゃないんですけど…実は、昨日泣きすぎて目が腫れちゃって…会えるような顔じゃないんですよ…」

『はははっ!!そんなことかよっ!!!心配して損したわっ!!』

「…えっ!?そんな笑わなくても…」

『あっ!!わりぃーわりぃー!!だって泣いて目が腫れてるからって俺が冷めたりする訳ねぇーだろ?俺は、お前に対してそんな簡単に冷めるほどの愛じゃねぇーから!!』

「ははっ!!ありがとう。楽になれたっ!!!」

『そっか、さっきと全然違って活き活きした声聞けてよかったわっ!!俺、放課後寄るから!』

「はい、私も先輩の顔が早く見たいです♪」

私はよかったと思う、先輩にこんな極端な話をしただけなのに、こんな幸せなこと聞けるなんて…。




『おまっ!!照れんだろーがっ!!!』

可愛い…先輩。

先輩は知ってる…?


照れた先輩…女の子みたいにウジウジしちゃって可愛いんだよ…?

今、先輩は携帯の向こうでどんな表情をしてるの…?


実際は聞かなくてもだいたい予想がついている私…。


「だから先輩可愛すぎっ!!」

『おまっ!!!俺をからかうなっ!!』

「だって可愛いんだも~んっ!!」

『お前の方が可愛いわっ!!』

「えっ…!?」


“ドキッ”っとした…サラッとそんなセリフ言うんだもん。


心を奪われない女の子が居る訳がない。


『お前は本当に素直に反応するな♪そういう所が可愛い!!』

「っちょっと先輩っ!!!///もう切りますよ!!!」

私は携帯ごしで会話しててよかったと思う。


こんなリンゴのような顔を見られてほしくないから。


『あー!!切ってほしくねぇー!!!…けど…』

「けど…?」

『俺、次体育。』

「えっ!?じゃぁ、急がなきゃいけないじゃないですか!!」

『あぁ!!じゃーまた見舞い行った時に話そうな♪』

「はいっ!!でわっ!!!」


何か…改めて私は先輩のこと好きなんだなって実感する。






先輩との電話を切った瞬間に、また携帯が鳴る。


私は着信名を確認せずに電話に出た。




「もしもし?」

『…あ、未来?』

電話の相手は真央だった。



「うん、どうしたの…?」

『あのさ…実はね、』

「うん。」

嫌な予感がした。


その予感が当たりそうで…怖かった。


『赤ちゃんね…産んでいいって!!!その代わり、学校辞めてちゃんとしなさいって…。』

やっぱり…予感は的中した…。


学校…やっぱり学校辞めなきゃいけないんだ…。


「学校…辞める…の?…真央居なくなったら…私…。」


『未来…ごめん、ごめんね…本当にごめん…未来…私ね、慶太の子供本気で産みたいと思ってるの…慶太との赤ちゃん、産んで幸せな家庭を築きたいの…。』


「わかってる…本当はわかってるはずなんだけど…、私…」

私が言おうとした時に、いきなり真央は私の言葉をさえぎって話しをしだした。


『未来…私のお腹の中には1つの命が宿ってるの。その命は一生懸命心臓動かして生きてるの。どうか、理解してほしい。私は、未来のこと本当に本当に大好き。一番信用してるし、一番頼りになるから…一緒にこの幸せもわかってほしいの。ね…未来?』



「…そ…う…だよね。赤ちゃん産んだら抱っこさせてねっ!!!」


『うんっ♪もちろんっ!!理解してくれてよかった!!!本当にありがとう☆じゃぁね!!』


「うん♪あっ!!!待って!!」


『んっ!?』






真央…真央は産みたいって思ってるんだもんね。


私がそれに反対する権利なんてどこにもないんだもんね…。



私が真央の見方にならないでどうするっていうんだろ…?

真央…少しでも真央のこと色々言ってごめんね?


私が真央支えないといけないよね…!!



私自身が強くならないと…

真央、もう大丈夫だから!!!




「ねぇ…真央…」


『ん?どうしたの?』



「会いたい…今から会える?久々に話したいから♪」


『久々ってっ!!2日前に話したばっかじゃんっ!!!』


「そんだけど…真央に会いたいの〜」


『何か、今日の未来甘えん坊だね♪クスクスッ』


真央の笑い声が電話の向こうから聞こえた。




会いたいなんて言った自分が恥ずかしくなる。


「も〜真央!!!!」


『ごめんごめんっ!!待ってるよ♪』



ごめんと言ってても電話の向こうでは笑ってるんだろうなあ〜なんて考えていた。



「うんっ!!今から準備するからっ!!また、あとでね!!」



そう言って私は電話を切った。








全身鏡の前に立って気づいた。


目…腫れてるんだった!!

なのに真央に会うの…?どうしよう…?


そうだ!!サングラスして行こう!!!


今日の天気は雨。なのにサングラス。


普通に合わない組み合わせ。

間違ってるとはわかってるけど、目を隠すには丁度いい。



私は鏡の前に立ちながら上から下まで見直す。

外を出歩くわけでもないのになぜか気合いが入っている服装。


そして…サングラス…。


自分でも笑っちゃうくらいおかしい。


カバンに携帯やタオルなどを詰め込んで家を出る。


「行ってきまーす!!」

「えっ?どこに行くのー?」

リビングから疑問を飛ばす母。


「真央のところー!!」

「大丈夫なのー?」


私たちは同じ家にいるのに大声で会話をする。



「うーんっ!!」

「気をつけないさいよー!!」

「はーいっ!!!」





やっぱり外は雨…しかも土砂降り。


「ふぅ~…」

私は深呼吸をして1歩1歩と足を踏み出して行く。


15分ほどして真央の家に到着。



私は呼び鈴を押す。


“ピンポーンッ”


『はい?どちらさまですか?』

「あっ!!!南です。」

『あ~っ!!!未来ちゃんね。真央居るわよ、どうぞ。』


私は傘をたたみ玄関まで移動する。


「お邪魔しまーす」

「いらっしゃい♪どうぞ♪」

家の中に入るとすぐに、笑顔で真央のお母さんが出迎えてくれた。



「どうもっ♪」

私もそれに笑顔で答える。


真央の部屋に行こうと階段に足を置いた時、


「サングラス…?どうして?未来ちゃん面白いのね♪」

と、真央のお母さんが質問してきた。


笑いをこらえているのか肩が小刻みに動いていた。



「はははっ、気にしないで下さいっ」


私は急に恥ずかしくなって、そう言って急いで階段を駆け上った。







ドアには、「真央の部屋」と書かれた板が掛けられている。


そのドアを私はノックする。

“コンコンッ”


「はーい!!」

真央の元気のいい声が聞こえると共に足音が近づいてきた。


「いらっしゃい♪!!!」

そう言いながら、すっごい笑顔の真央がドアを開けてくれた。


「ありがとう!」

「今日はどうしたの?いきなり会いたい、だなんて♪」

「だって学校じゃもう会えなくなるんだもん、会えるときに会っとかないと!!」

「そうだねっ!!でも…未来、本当にごめんね?」


「もう気にしなくていいよ。真央の幸せ願ってあげれない友達なんて最悪でしょ?そういう人にはなりたくないからさっ!!私は私なりに真央を支えるつもりだよ?」


「ありがとっ…」

真央はそう言いながら静かに涙を流した。


その涙はものすごくキラキラしてて綺麗なもので、思わず見とれてしまうほどだった…



「真央…?何で泣いてるの?」

「…未来は私がいなくても十分大丈夫だね♪」


涙をぬぐいながら笑顔で真央が答えた。


「うぅん、大丈夫って訳じゃない。でもね、大丈夫にしなきゃいけないんだよ…?」

「そっか…未来、強くなったよね。」

「え…?」


「未来は気づいてないかもしれないけど…最初の頃に比べて強くなったと思うよ。」

「そっか♪」





私…成長してるんだ…


そう思えると嬉しかった。

得に、いつもしっかりしてる真央から言われるなんて…。


すっごく嬉しかった。



「どうしてサングラス?」

一番聞かれたくないこと…


でも明らかに気候とは合わないものをしている私に疑問を持たない人は居ないだろう…。


「ちょっと、泣きすぎて目がやばいんだよね…」

「未来は泣き虫だからねぇー!!!」

そう言いながら真央はわたしの肩をツンツンと突いてきた。


「誰のことで泣いたと思ってんのよー!!!!」

「はははっー!!ごめんー!!」


私たちは今までの寂しかった気持ちを埋めあうように、じゃれ合った。



「そういえば…」

「え?」

「今日、何で学校休んでんの?」

「いや…恥ずかしながら目のせいで…」

「あんた目で休んじゃったのっ!?信じられなーい!!」

真央はすっごい呆れた顔で言ってきた。