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翌朝、俺は黒のベンツでリュウに学校の近くまで送ってもらった。

「さんきゅ、リュウ。服はまた返しに行くよ」

昨夜は、そのままリュウの家に泊まったので、今朝はリュウの服を着て出勤している俺。

「面倒なので差し上げます。じゃ、頑張って下さい」

「そ?じゃ、遠慮なく。あと、言われなくてもわかってるよ、じゃな」

俺は車から降りて、後部座席に座っているリュウに軽く挨拶をしてから校門へ向かう。

それにしても、なんで来たばっかりの俺が校門を開けないといけねーんだよ。

ホント、ついてないぜ。

ーーーん?もう、誰か校門にいるじゃねーか。

誰だよ、はえーな。

ん?あれって…………

「お前、こんな朝早くに何してんの?」

俺は、校門の前で寒そうに待っている藤崎に声をかけた。

「…瀬良先生こそ」

藤崎は気怠そうに俺を見上げながら言う。

「俺は今日、当番だから早いんだよ」

俺はワザと欠伸をしながら校門の鍵を開けた。

今日も顔色が悪いな、コイツ。

こんな時間に学校に来るなんて、また眠れなかったのか?

やっぱ、家に何か問題がありそうだよな。

コイツってば、俺の番号を教えたのにかけてこねーし、どうすっかな?

俺が色々考えながら鍵をポケットにしまっていると、

「クシュン…」

藤崎が小さなクシャミをしたので、俺は寒そうにしている藤崎の白くて綺麗な頬に手を当てた。

「は?お前、何時からここにいるんだよ。スゲー冷たいじゃん」

「ーーーっ///」

「ぷっ、なに赤くなってんの?昨日は青で今日は赤かよ。忙しーヤツだな」

「ほっといて下さい///」

顔を赤くして固まってしまう彼女が可愛くて、ついからかってしまった。

……可愛い?

何言ってんだ、俺?

生徒にいらない感情を持ってんじゃねーぞ。

そんなことより、コイツ、マジで顔色が悪いな。

とりあえず、体を温めないと…。

俺は藤崎を保健室へ連れて行き、お湯を沸かして、温かいココアを作り飲ませる。

「ーーったく、お前ってホント手がかかると言うか…」

はぁ…と溜息をつき、俺はコクンとココアを一口飲んだ。

さぁ、どうすっかな…。

コイツ、俺の事を信用してないのか全然連絡してこねーし…

どうやったら心を開いてくれる?

何か隠してるのは確実だと思うけど、コイツ自身が助けを求めて来ない限り、俺は手出しが出来ない。

「放っておいたらいいじゃないですか」

藤崎が少し眉間に皺を寄せながら言った。

「ホント可愛くない女。何をそんなに強がってんの?」

「別に強がってなんていません」

マジで、頑ななヤツだな。

少し挑発して喋らせてみるか?

「へぇ、俺には強がってように見えるし、構って欲しいって顔にも見えるけど?」

「気のせいじゃないですか?」

顔色ひとつ変えずに返事をした藤崎。

おいおい、コイツ、マジで女子高生かよ?

しっかりし過ぎてんじゃねーか?

でも…

本当のコイツは、こんなクールなヤツじゃないと思うんだけどな。

まずは、コイツとの距離を縮めて俺の事を信用してもらうしかないか…。

「あっそ?まぁ、お前がそう言うんだったらいいけど、何かあったときはすぐに言えよ」

「別に何もありませんから」

少し眉を下げて言った藤崎。

その顔、俺には「助けて欲しい」って顔に見えるけど?