*****



体育館での全校集会で、女生徒たちの「グス、グス」と鼻をすする音が響く。

今、瀬良先生の最後の挨拶が終わった。

もう、明日からはこの学校には来ない。

私はボーっと突っ立ったまま、瀬良先生が壇上から下りる姿を見ていた。

瀬良先生にフラれたあの日から、何も考えることが出来なくて、散々泣いてもう涙も出なくなった。

泣き疲れて眠って、あのときの夢を見てまた泣いて…そんな日々が続き私の心は何も感じなくなったのかも知れない。

「陽菜…大丈夫?」

背後から杏里が心配して私に声を掛けてきた。

「平気だよ。もう、終わったんだもん。関係ないよ」

私はニコッと杏里に笑ってみせた。

「本当にそれでいいの?陽菜は納得してるの?」

「ハハ…納得もなにも、本人にハッキリ言われちゃったんだから仕方がないよ」

そう、瀬良先生は私のことは遊びだったと言ったんだ。

それは、初めから私のことを好きじゃなかったということと同じ。

私たちには何も無かった。

私の初恋は遊ばれて終わったの。

「でも、今の陽菜…とても辛そうな顔してるよ」

「そんなこと無いって。杏里の気のせいだよ」

…嘘、本当は辛い。

今でも瀬良先生の姿を見ると、胸の奥の方がきゅぅっと締め付けられる。

心が何も感じ無くなったなんて嘘。

感じ無くなりたいと願ってるだけ。

感じ無くなって、この苦しさから逃げ出したいだけなんだ。

そう思うと、枯れたと思っていた涙が目に溜まる。

「……辛いよ、、、杏里」

私が杏里に弱音を吐くと、杏里は優しく私を包み込み背中をさすってくれた。

「私も付いていくから、もう一度、話しをしに行こう」

本当は、まだ信じられない気持があって…

私のことをずっと守ってきてくれた瀬良先生が、あんなに冷たい言葉を言うなんて思えなくて…

私はコクン…と小さく頭を縦に振った。