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「お前のことが好きだ」




瀬良先生に告白された私は、今、瀬良先生の腕の中にいる。

夢でも見ているんじゃないかって…

まだ、信じられなくて…

心臓はドキドキとうるさいし、頭の中はグチャグチャなままだし…

「おい、なんとか言えよ///」

瀬良先生がコツンと私のおデコを叩いた。

「む、無理…です」

「なんで?」

「まだ、信じられません」

「は?なんで?」

「だって…昨日、、、」

私は言いかけて途中で口を噤んだ。

あの香りのことを聞いて、雨宮先生と何かあったなんて知ってしまったら、私…きっと立ち直れない。

「昨日って何?」

「何でもありません」

私は答えることを頑なに拒否した。

すると、瀬良先生の顔がどんどん意地悪なものへと変わっていく。

「へぇ…答えないつもりなんだ」

両頬をガシッと押さえられ顔を上に向かされた。

瀬良先生の綺麗な顔がすぐ近くにあって、私の鼓動は一気に速くなり顔に熱が集まる。

「は、離して下さい///」

「嫌だね。答えるまで離さない」

そう言った瀬良先生は更に私との距離を縮めた。

もう、鼻先が触れてしまいそうなくらいに近い。

「早く言わないと、このままお前の口、塞ぐよ?」

ニヤッと片方の口角だけ上げて笑った瀬良先生は、少しずつ私に近付いた。

瀬良先生の鼻先が私の鼻先に触れる。

伏せられた睫毛は長く…色っぽくて…

瀬良先生のサラサラの前髪が私の頬に触れ、あと数センチで唇がーーーーー

「い、言いますっ///!!」

私はこのドキドキに耐えられず白状する事にした。

「初めから素直に言っときゃいいんだよ」

クスッと笑い私に軽くデコピンした瀬良先生。

く、悔しい…。

「ーーーで?昨日って何だよ」

確かめるの怖いけど……仕方がない。

私は意を決して口を開く。

「昨日…車で送ってもらったとき、瀬良先生から…あ、雨宮先生と同じ香りがしたっ」

私は返ってくる言葉が怖くて、両目を瞑って拳をぎゅっと強く握った。

「マジか…。あの女、もしかしてワザとかよ」

瀬良先生が髪をワシャワシャとして、「はぁぁぁ…」と大きな溜息を吐いた。

「雨宮先生の香りがあれだけ移るってことは、それだけ……密着した状況があったってこと、ですよね?」

想像しただけでも胸が苦しくて涙が出そうになる。

「あー…、違う、違う。あれは、あの女が俺に無理やり香水をかけてきたんだよ。意味がわかんねーだろ?」

「…マーキングじゃん」

「は?」

「それって、瀬良先生は私のものだってアピールしてるんだよっ。他の女の人が近づいて来ないように、マーキングされたんだよっ」

好きな人から他の女の人の香りがすることが、どんなに嫌な気持ちになるか瀬良先生は全然わかってないっ。

「なに?お前、怒ってんの?」

メチャクチャ怒ってるよっ!悪い?

「私っ、お前って名前じゃないですっ」

「ぷっ…何それ、もしかしてヤキモチ?」

「違いますっ//////」

「可愛いな、お前」

「だからっ、お前じゃな…ん、、、」

突然、唇を柔らかいもので塞がれて私は喋れなくなった。

いとも簡単に奪われた私のファーストキス。

強引に塞がれたのに、そのキスはとても優しいもので…

胸の奥がきゅぅぅんとなった様な気がした。

そっと離された唇には、まだ余韻が残っていて…

もう一度して欲しいと思ってしまう。

瀬良先生が優しく笑い、細長い指で私の髪を耳にかけた。

そして、



「陽菜は俺のこと好き?」



初めて名前をよんだ瀬良先生の声に、私の心は鷲づかみされる。

答えはもう決まっている。




「…大好きです//////」





この日から私たちは秘密の恋人同士になった。