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ガチャ…



瀬良先生が鍵を開け玄関に入った。

「どうした?入れよ」

瀬良先生が、玄関先で立ち止まっている私に不思議そうな顔をしながら言う。

「…はい」

私達はママとの話が終わり、荷物を取りに瀬良先生のマンションへ戻ってきていた。

正直、ここを出て行きたくない。

瀬良先生とずっと一緒に居たい。

……でも、ダメだよね?

ママと和解した今、私がこの家に居ていい理由なんて無い。

「変な奴。ほら、早く荷物をまとめねーと。母親が家で待ってんぞ」

わかってる。

わかってるよっ。

…でもっーーーーーー

「…帰りたく、ない」

今、私が言える精一杯の瀬良先生への告白。

私は靴を履いたままの状態で下を向き、ドキドキとしながら瀬良先生の返事を待つ。

「………ほら、早く部屋へあがれ」

呆れたような瀬良先生の声。

ハハ…完璧、相手にされてない。

酷いな…

聞こえてないフリするんだ…

私は静かに靴を脱ぎ、荷物をまとめに部屋に入った。

閉めたドアにもたれ掛かり顔を手で覆う。

涙がポロポロと溢れ、指の間を流れていった。

私の気持ちは、瀬良先生にとって迷惑なものなんだとこの日思い知ったんだ

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ママと和解した日の夜、家に帰った私はママとこの何年かを埋めるかのようにお互いの気持ちを話し合った。

その時に初めて知ったんだけど、私が家を出てから、毎日のように瀬良先生がママに話しをしに来ていたらしい。

ママは瀬良先生と話している間に、アイツと別れることを決心したんだって話してくれた。

毎晩のように帰りが遅かったのは、雨宮先生と会ってたんじゃなくて、ママに話しをしに来てくれてたんだ…

もう…そんな事されて、どうやって瀬良先生のこと諦めたらいいのよ。

もっと好きになっちゃうじゃん…

バカ……………