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今日も飽きずに俺達に構うジジィ。

毎日、余りにジジィがしつこいので、二年生になると俺達は授業を受けるようになっていた。

だんだんと友達も増え、なんとなく学校が楽しくなってきた頃、ジジィの元気がないことに気付く。

見た目は元気なんだけど、なんかパワフルさに欠けるというか…

最近、少し痩せたような気もする。

ジジィはメタボ対策のダイエットだって言ってたけど…。

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「は?なんでジジィがこんなトコに居るんだよ


工事現場のバイトが終わり、着替えて仮設事務所を出てきた俺は驚き目を見開く。

だってよ…

こんな夜中に突然、ジジィが仁王立ちして待ってるんだぜ?

普通はびっくりするだろ?

「腹減ってるだろ。メシ行くぞ」

は?メシ?

今、何時だと思ってんだよ?

夜中の二時だぞ?

しかも…

「なんでリュウまでいんの?」

ジジィの背後になぜかリュウがいた。

「急に呼び出されたんですよ。不可抗力です」

「そうそう、俺が呼び出したんだよ。ほら、つべこべ言わずにメシ行くぞっ」

そう言って、強引に俺とリュウを連れて行くジジィ。

その日は、ファミレスに連れて行かれ、腹が破裂するんじゃねーかってくらいに食わされた。

二年の初めから終わりくらいまで、そんな事が頻繁にあり、自然とジジィとの距離が近づいていく。

表には出さないが、ジジィのことを俺は本当の親父のように思ってきていた。

そして、高校に入ってから三度目の桜の季節。

俺はジジィに呼び出されて、なぜか桜並木の下にいる。

「まぁ、座れや」とジジィが地面をトントンと叩いたので、俺は素直に座ってやった。

「俺、桜って好きなんだよなぁ。雄大はどうだ?」

急になんなんだ?

今日のジジィ…なんか変?

「そんなことより、なに呼び出してんだよ、ジジィ」

「お前さぁ、前から言ってるけど俺はジジィじゃなくて、豊田先生だから」

そんなの今さら恥ずかしくて言えるわけねーじゃん。

「うるせーよ、ジジィ」

「いつまでたっても生意気だな、お前は」

ワハハッと大きな口を開けて笑ったあと、急にジジィの顔が真面目なものに変わる。

「そんな生意気なお前に話しておきたい事があって、今日はここへ来てもらったんだ」

「…なんだよ」

「お前さ…学校の先生になれ」

「は?」

突然、意味不明なことを言い出したジジィ。

なんで俺が?

どう考えても一番向かない職業だろ?

「雄大には、絶対に先生が天職だと思うんだ」

「全く意味がわんかんねー」

「お前は、人間の弱さを知ってる。良いのか悪いのか、お前自身が色々と経験してきたからな。そんなお前は、分かっているからこそ悩んでいる奴らを助ける事が出来ると俺は思うんだ」

「…別に俺はそんなんじゃねーよ。買い被り過ぎだ」

「バーカ、何年、教師をやってると思ってるんだ?俺は人を見る目には自信があるんだよ。お前は教師になって、お前のように悩んでる奴らの力になってやれ。そうだな…より生徒が悩みを打ち明けやすい保健室の先生。養護教諭になれ、雄大」

そう言って、ジジィは俺の頭をクシャクシャッとし二カッと笑う。

桜の花びらがハラハラと散り、この時、なんだかジジィが遠くへ行ってしまうような気がしたんだ…

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あの日以来、ジジィは学校へ来なかった。

校長からは集会で「豊田先生は早期退職をされました」と伝えられる。

なんだか腑に落ちないまま時が経ち、今度ジジィに会えたのは、ジジィの葬式だったんだ。