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シャッ………



保健室へ入ってすぐに、仕切り代わりのカーテンを開けた瀬良先生。

「早く寝ろ」

「え?」

「え?じゃねーよ。早くベッドに入って寝ろ」

どうして?別に本当に体調が悪いわけじゃないのに。

最近は瀬良先生のお陰で夜も眠れてるから、どちらかといえば体調はいい方だと思うんだけど…。

私が首を傾げて不思議そうに瀬良先生を見ていると、

ーーーーーっ///⁈

いつのまにか瀬良先生の顔がすぐそこにあって、コツンと額を合わせあっていた。

「ちょっ、何するんですかっ///」

「いいから、ジッとしてろ」

瀬良先生は私の後頭部をガシッと掴み、身動きを取れないようにする。

瀬良先生の伏せられた長い睫毛やサラサラの髪、ゴツゴツとした大きな手、全てが私の心を刺激する。

もう、どうしようもなく瀬良先生の事が好き。

好きすぎて気持ちが溢れ出してしまいそうになる。

でも、この気持ちを言葉にしてしまったら…

きっと、今の関係は崩れてしまう。

瀬良先生は私から離れていってしまう。

…………絶対に言えない。

「やっぱマジで熱があるじゃねーか」

瀬良先生は少し怒ったような顔で、私の額をパシッと軽く叩いた。

「痛いです」

私は額をさすりながら返事をする。

「お前が素直に保健室へ休みに来ないからだ。バーカ」

「いや、だって熱があるだなんて知らなかったし…」

少し怠いなとは思ってたけど、いつもより全然マシだったから気にしてなかったんだよね。

「はぁ…、だいたいお前は自分のことに対して鈍すぎるんだよ」

「そんな事ないですよ?」

「マジ重症だな、お前。もういいから、早く寝ろ。今後、少しでも体調が悪いと思ったら、ここへ来て休め。わかったか?」

瀬良先生は私の頭にポンと手を乗せ、顔を覗き込み言った。

「…はい///」

いや、本当に私ってば、瀬良先生の仕草や言葉にドキドキしぱなしで…違う意味でマジ重症なんです///

「よし、じゃあ、早く寝ろ」と瀬良先生に言われ、私は素直にベッドに寝転んだ。

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「…ねぇ………です……か」

薬を飲んで眠っていた私は、カーテンの外から聞こえてくる話し声で眼が覚める。

…瀬良先生、誰と話してるんだろ?

私は気になって聞き耳を立てた。

「勿体無いけど、お断りします」

「どうしてですか?お食事くらいいいじゃないですか。私のこと、お嫌いですか?」

この声は……英語の雨宮先生だ。

雨宮先生が瀬良先生をご飯に誘ってる?

やっぱり、昨日の夜遅かったのは雨宮先生と居たからなの?

「昨日もお伝えした通り、俺、猫を飼い始めたので早く家に帰らないといけないんですよ。なので、仕事終わりは誰とも約束しないんですよ」

え?猫?瀬良先生、猫なんて飼ってたの?

私、瀬良先生の家に来てから一度も見たことが無いんだけど…。

しかも、「昨日もお伝えした通り」ってことは、昨日の雨宮先生の誘いも断ったってこと?

じゃあ、昨夜はどこへ行ってたの?

「猫なんて、少しくらい放って置いても大丈夫ですよ」

雨宮先生が話し出したので、私は再び聞き耳をたてた。

「その猫、俺の焼いた焦げまくりの魚をウマイって食うんですよ。可愛いでしょ?」

…………え、、、それってーー

「おまけに愛情に飢えてて超寂しがりやなんですよ。俺が守ってやるって決めてるんで、これ以上、寂しい思いをさせたくないんです」

ひょっとして…私のこと?

うそ…

そんな風に思ってくれてたなんて嬉しい///

「私は、その猫に負けてるって事ですか?」

「……………」

雨宮先生が話したあと、沈黙がしばらく続いたので、私は気になってそっとカーテンの隙間から外を覗いてみる。

ーーーーーっ⁈

私は驚いて思わず出そうになった声を、口に手を当て必死に飲み込んだ。

だって………

私には刺激的すぎる光景だったから…。

雨宮先生が瀬良先生の首に両腕を回して、じっと熱っぽい視線を送っている。

そんなことされたら、殆どの男の人は雨宮先生に落ちちゃうよ…。

私の胸がズキズキと痛みだしたので、さっきまで口を押さえていた手を胸に当てギュッと服を握った。

覗くんじゃ無かった…。

私が深く後悔をしていると、

「離して下さい。そこで寝てる生徒がいるので、雨宮先生も見られては困るでしょ?」

瀬良先生が、首に回されている雨宮先生の腕をそっと外す。

雨宮先生は少し悔しそうに唇を噛み、

「…また来ます。私、諦めませんから」

と言って保健室を出て行った。

瀬良先生は「はぁ」と溜息を吐きながら、髪をクシャクシャッとしている。

私は物音を立てないように、そっとベッドへ戻った。

布団を頭まですっぽりと被ってから目を瞑る。

どうしよう…

雨宮先生に瀬良先生を取られちゃう。

そんなの嫌だっ。

……私はどうしたらいいの?