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「気をつけて行けよ」



藤崎のちっこい頭をポンポンとしてから、俺は藤崎とエントランスで別れた。

駐車場へ行き車に乗りエンジンを掛ける。

ここからの俺はストーカーみたいで、ちょっとヤバイ奴だと思う。

俺は駐車場を出て、ゆっくりと駅に向かって車を走らせる。

お、いたいた。

藤崎発見。

俺はここ何日か、藤崎が駅まで無事に辿り着くかをこうやって見守っている。

だってよ、アイツが藤崎の前に現れないとは限らないからな…

そう思うや否や、藤崎の姿が細い路地裏に突然消えた。

「ヤベッ!」

俺は直ぐに路肩に車を停めて路地裏へ向かう。

路地裏に着くと、アイツが藤崎の両手首を壁に押し付けている姿が見えた。

プチッ…と何かが切れる音がする。

俺は急いで駆けつけて、男の首根っこを掴み思いっきり背後へぶっ飛ばした。

「大丈夫かっ、藤崎っ」

俺が声を掛けると

「瀬良先生っ」

と藤崎は青ざめた顔で俺に抱きついてきた。

こんなに肩を震わせて…

俺がもう少し早く助けに来れたら…

「遅くなってゴメン」

俺は何も無かったという安心感と、怖い思いをさせてしまった懺悔の気持ちで、藤崎をぎゅっと強く抱きしめる。

「なんだよっ!またお前かよっ!!何度俺の邪魔をしたら気がすむんだよっ!」

尻もちをついていた男が勢いよく立ち上がり、俺に向かって殴りかかってきた。

俺は藤崎を抱きしめたまま、ヒョイッと男のパンチを交わす。

そして、藤崎にはこの男を殴るところを見せたくないので、後頭部をグッと引き寄せ俺の胸に押し当ててから男を思いっきりぶん殴った。

俺の拳が顎にクリーンヒットして、男は背後へぶっ飛ぶ。

「藤崎…お前、ちょっとそこの角で待ってろ。車で学校まで送るから」

ここから先は絶対に藤崎には聞かせられない。

「でも…」

藤崎は不安げに俺のことを見上げた。

少しでも不安な気持ちを取り除いてやりたい。

「大丈夫。直ぐに行くから、安心して待ってろ」

俺はいつものように笑って言った。

藤崎はコクンと頷いて、俺に言われた通り角に向かって歩いて行く。

藤崎の姿が見えなくなってから、俺は意識を失いかけている男の胸ぐらを掴み持ち上げた。

意識を取り戻し酷く怯え出した男に、俺はより恐怖を与える。

掴んでいる胸ぐらを捻り、男の首を軽く締めてから俺は顔を近づけ睨みつけた。

「今後、少しでも藤崎に関わったら、絶対に殺す」

「ヒィッ、も、もうっ、近づきませんっ!母親とも別れますっっ」

ブルブルと青ざめて震えている男の胸ぐらをパッと放す。

「…失せろ」

俺はこれ以上、この男を殴ってしまわないように自分の手で握った拳を包み込みながら言った。

男はガクガクの足で何度か転けながら逃げて行く。

「はぁ………」

俺は大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。

だってよ、こんな怒り狂った顔を藤崎に見せるわけにはいかねーからな。

「よし、行くか」

俺は自分の頬を両手で叩いて気合を入れてから、藤崎が待っている場所へ向かった。