私はやっとの思いで口を開いた。
「私、自分の記憶を思い出しちゃったから、もう一度消されるんだ。
また白峰咲良としていきることになったの…。」
私が言った言葉は、2人を絶望まで連れて行った。
「そ、んな……」
「ねぇ咲良、嘘だと言って……嘘よね……?」
私は本当だよ、と言おうとしたけどすごく泣いていたからそれが言えなかった。
「………っ!」
涙が止まらない……。
「ううう……!!
ごめんね咲良、辛い思いさせて、親なのに何もできなくて、ごめんね……!」
「苦しい思いさせてすまない……。
本当に、俺は父親失格だ……!」
やめてよ2人とも。
泣かないで。
笑顔で私を見送ってよ。
じゃないと離れたくなくなっちゃう……。
「………2人は悪くない。
こうしてお父さんとお母さんに会えて良かった…………。
雄大が外で待ってるの。
もう…………行くね………。」
これ以上いたら、本気で離れたくなくなるから。
私は2人から体をそらし、扉の方へと向かう。
「お願い咲良!!行かないで!!」
「咲良…!行くな…!!」
私は扉まで走る。
最後に振り向いて、泣きながら笑顔で
「バイバイ……。」
とだけ言って、また扉を閉めた。
閉めた扉から、ドンドンと音がする。
きっと2人が叩いているのだろう。
「もういいのか?」
白峰咲良のお父さんが戻ってきて、また扉を閉めながらそう言った。
「余計悲しくなるんで……。」
涙を抑えることができない。
「咲良………、よく頑張ったな……。」
雄大が私のそばに来た。