そう言い残して2人は帰っていった。
そしてその様子を見ていた伶奈も
「私が大好きな咲良になるのを楽しみに待ってるね。」と言い残して帰っていった。
………急に静かになった病室。
さっきまでの出来事がまるで夢だったかのように感じられた。
夢であってほしかった。
現実味がない話で、信用し難い話ばかりだったから。
でも実際に私は私の記憶を忘れていて、代わりに白峰咲良の記憶だけがあった。
今は私の記憶と白峰咲良の記憶の両方が私の頭の中にある。
でもまた、私が私じゃなくなる。
考えただけでも怖くて……。
「咲良……。」
優しい声で私を呼ぶ雄大のことも、また忘れてしまうの……?
どうして…………どうして私なの?
「雄大………。
本当はすごく怖いの。雄大のことをまた忘れるなんて、嫌だよ……。」
「……………たとえ咲良が俺のこと忘れても、俺は咲良を忘れない。
俺の中では咲良は生きている。
……ってさっきお前が言っただろ、ばか。」
私の頭の上にぽんっと手を置いた雄大。
その手は大きくて、男の人の手で。
会わない間にこんなにも大きくなってたんだなって、改めて実感した。
その手は優しくて、暖かかった。