「さく、ら……」
智樹の声は弱くて、小さかった。
智樹の息が荒くなってくる。
「お前は、白峰咲良じゃなくて………
北条咲良だ……!
……全部思い出せ、最後まで、抗え……!
未来なんて、変えてや、れ…………」
そのまま智樹は私の方へ倒れかかった。
北条、咲良……?
その瞬間、頭が鈍器で殴られたような感覚に陥り、激しく痛みだす。
なに、この感覚……。
頭が、痛い………!
頭を抑えてしゃがみこみたかったけど、智樹を支えるので精一杯だ。
何か、脳裏に……映像が流れてくるような……。
でも、今はそんなことより…
「智樹…………智樹!!
智樹、お願い何か喋って!!」
智樹の反応が全くなく、私にもたれかかっていた。
無意識に智樹の背中に手を回すとぬるりと何かが手につく。
自分の手を見ると………真っ赤で染まっていた。
嫌だ、嫌だ、これは夢だ、夢……。
遠くでサイレンの音が聞こえてきた。
頭の痛みがどんどん増してくる。
智樹が……智樹が……!!
あまりの頭痛に耐えきれなくて、意識が遠のいてくる。
嫌だ、どうか夢であって……。
その瞬間、脳裏にある1人の人物像が浮かび、そこで私は意識を手放した………。