私の反応を見て、女の人は戸惑っていた。
「………うそ、だよね?
本当に忘れてるとか、ないよね……?」
忘れてるも何も、私は入坂のことなんて知らないよ……?
返事に困っていたら、
「咲良。」
という智樹の声がした。
良いタイミングで智樹がきてくれた……。
「すいません、私行かないといけないので。」
ぺこりと頭を下げて、私は智樹の元へ行く。
「………ねぇ咲良!
入坂は咲良の帰りをずっと待ってたんだよ?
連絡ひとつよこさない、咲良のことをずっと信じて待ってたんだよ……!?
こんなのひどいよ!その人は、彼氏なの!?
違うよ!咲良の彼氏は入坂でしょ!!」
女の人は私に向かって、大きめの声でそう言った。
………違うよ。
入坂は、“咲良”さんを……裏切ったんだよ。
ひどいのは……入坂の方。
そう女の人に言いたかったけど、余計ややこしくなりそうだったから無視して智樹のところへと行った。