智樹を好きになろうとしても。
入坂への想いは消すことはできない。
今も入坂のことを考える時がある。
入坂と一緒にいた時を思い出すと、胸が苦しくなるんだ。
できればこのまま入坂に会いたくない。
学校が始まってほしくないと本気で思うし本気で願っている。
「………考え事か?」
智樹の声で我にかえる。
だ、ダメだ…!
智樹という彼氏がいながら他の男のことを考えるとか最低すぎる!
忘れないと………
もうこれ以上、こんな私を好きと言ってくれる彼を傷つけたくない。
もういいんだ。
あれもいつかはいい思い出になる時が来るよね。
「何でもないよ。ていうか、もう直ぐつくよね!」
「…………あぁ。あと数駅で着く。」
智樹の視線が私から外の景色へと移った。