ふざけてる感じもしない。





だから私も真面目に答えた。






「記憶喪失じゃないです。
小さい頃の記憶もちゃんとあるんで、人違いだと思います。」




そしてまた、少しの沈黙が流れて彼は言った。




「……………………そうか。
ありがとう、こんなおかしな質問に答えてくれて。


やっぱり俺の勘違いなんだろうな。
ごめんな、朝あんなことして。」





そう言う彼の表情はやっぱりどこか寂しげだった。





悲しそうだった。






見ている私まで苦しくなって、つい聞いてしまった。