驚いた顔で入坂が振り返り、私を向く。
「………あっ……。」
なに、やってんだろう私。
入坂を引き止めて、どうするの?
迷惑なだけだ……。
「えっと………2人も仲良く幸せにね……。」
声を震えないように、涙声にならないように。
私は掴んだ手を離して、軽くうつむきながら頑張って笑ったふりをして言った。
『咲良……、ありがとう!』
結局私の言葉に返事をしたのは伶奈だけで、入坂はなにも言わずに教室を出た。
『……お前』
『よしっ!私たちもデートするんだよねっ!
どこ行く?』
寺内が何か言おうとしたけど、それを遮って私は彼に話しかける。
わざと明るく振舞って……。