伶奈がいない時はいつも俯いて隅の方にいた。
特に家族関係の集まりとかが1番嫌いだったなぁ。
壁にもたれて、なるべく目立たないようにしてた。
……あ、でも1人だけそんな私に笑顔で話しかけてくれて人がいた。
誰だったっけな。
小さい頃だったから、名前が思い出せないし、顔もぼやけてる。
記憶が曖昧だ。
確か……
『同じ名前同士、仲良くしようね!』
ドクンッ
一瞬、脳裏に何かがよぎった。
今の………今脳裏によぎった言葉、人物像。
間違いない、私に話しかけてくれた子だ。
でもその子が言った言葉って……
同じ名前同士……?
その子もさくらって言うの?
思い出したいのに、それ以上の記憶が思い出せなかった。
まさか、ね。
世の中にさくらって名前の人、数え切れないくらいいるんだからこんな偶然もあるよね。
だから考えすぎは良くないよ、忘れよう。
そう思った時。
教室のドアが開かれた。
自然とそちらに目をやると……
「…………っ、」
時間が、止まったように感じた。
何もかもが静止しているかのように思えた。