「いーから、行けよ」
「なんで……」
「俺と一緒にいたいって、言ってもらえただけで十分だし」
私を立たせて、睦月は小さく笑う。
何で、そんな、"最後"みたいな言い方をするの?
俯く私。
すると、睦月の手がそっと私の頭を撫でた。
前髪をはらわれて、額に柔らかいものが当たる。
「……睦月?」
顔を上げると、睦月は私から目をそらした。
背中を押して、「ほら、早く」って。
「……分かった」
睦月の部屋から出る。
外は暗くて、吹いてくる風もとても冷たい。
睦月がどんなことを考えているのか、
今、何を思っているのか、私には分かるはずもないけど、でも。
部屋を出るときに一瞬見えた睦月の顔は、とても切なそうだった。