思い出すな、私。

先輩との記憶なんて、思い出したって悲しくなるだけなんだよ。





『先輩にとって、私は、ただの後輩ですか……?』


『……当たり前だろ』





きゅっと唇を噛みしめる。


先輩に教えてもらったバンドの曲が流れた瞬間、
私はイヤフォンを耳から外した。




この道で、先輩は転んだ私に手を差し伸べてくれた。

あそこの小さな公園で、先輩に小さな声で"可愛い"って言ってもらえた。



学校の外でも、先輩との思い出があるから、


ちょっと、辛いなぁ。






「あはは、何それ!高広って意外とバカだよね」






──ドクン。



聞こえた声に、"高広"っていう名前に、私は目を見開く。