お休みの一日は飛ぶように過ぎて。

あっという間に勤務日になってしまった。



四年前に出会っていた『私』は葛城穂花で、葛花穂でもある、と千歳さんに気付かれたら……と、憂鬱な気持ちを抱えたまま、田村さんの控え室に向かう。


「おはよう、穂花ちゃん」


現在午前九時二十分。

田村さんの勤務開始時間数分前だ。



挨拶をして、田村さんは柔和な顔に心配そうな表情を浮かべて口を開いた。

「ねえ、穂花ちゃん。
響様とは以前から面識があるの?」

「いえ……特には無いですけど……。
葛花穂として以外は」

「……そう」


田村さんの質問に違和感を覚えて問い返す。


「千歳さんに何か言われたんですか?」

「ええ……言われたというか……」


話しにくそうな表情をして田村さんが私を見る。


「教えてください、もしかしてすでに私が穂花だってバレちゃったってことですか?」

「いいえ、違うわ。
昨日、外出先から戻られた時に尋ねられたの。
住人全員の顔と名前が一致してらっしゃいますよねって。
探している女性がいるって言われて。
勿論、個人情報だから教えたりはできないって申し上げたの。
それを承知で、その女性にもし出会ったら伝えてほしいって言われたの。
名前も何もわからなくて、手がかりがないんだって。
それは必死なご様子だったの」