「……大丈夫?」



ヒョイ、と私より頭ひとつ分以上は背が高い千歳さんが屈んで私を見つめる。



「へ、平気ですっ」

「そっか、ならいいけど……。
ていうか、葛さんって細すぎじゃない?
……お手伝いさんって大変な仕事だと思うけどさ」

先程まで腰にまわしていた手を見ながら話す千歳さん。

「そ、そんなことないですからっ」


ああ、もう。

頬の熱が下がらない。

きっと私は今、耳まで真っ赤だ。



クスリ、と口角をあげて微笑んだ千歳さんは。

「……じゃ、『お手伝いさん』の話をしようか。
ソファもあるしさ」



既にきちんと座れる状態になっているリビングのソファに
私を促した。



「……え?
あの、私は……」

「……母さんが直接選んだだけ、あるね。
俺と年が変わらなさそうなのに、葛さんは信じられる人のような気がするから……お手伝いさん、改めてお願いします」



そう言って彼は頭を下げた。



「ちょ、ちょっと!
や、止めてください、響様!」

「……じゃ、引き受けてくれる?」

「いえ、あの……響様……」



あれだけ冷たくもなれる人だ。

私の何を気に入って雇用するのかわからない。

やはり、私には『お手伝いさん』なんて荷が重すぎる。