ガチャガチャッ……。

鏡とにらめっこをしていた私の耳に突然、鍵を開ける音が聞こえた。



どうして?!

田村さんとの約束時間には早いし。



まさか変質者?

いや、でも田村さんがロビーにいるのに、その可能性は低い。


じゃあ、誰?

この部屋の鍵を持っているのは私だけの筈……有子おばさまも千歳さんがうるさいから持たないとおっしゃっていたし。



驚きと恐怖に固まってしまった私は、なすすべもなく玄関ドアをただただ、見つめた。

扉が開くまでの時間がもどかしいほど長く思えた。

エプロンのポケットに入れているスマートフォンをギュッと握りしめる。



……な、何かあったら警察に……。

そんな思いを抱き、震えそうになっていると。



ガチャッ。



軽い音を立ててドアが開いた。

明るい廊下からの光が眩しくて一瞬目を閉じる私に。


「……あれ?
……誰?」



感情のこもっていない低い声が頭上から降ってきた。



恐る恐る瞳を開くと。


何処か見覚えのある秀麗な顔立ちの男性が佇んでいた。