恋愛感情はなくても瑞希くんは、とても大切な人だ。

その人にあんな表情をさせてしまった。

そのことがとても辛くて申し訳ない。


「……瑞希くんときちんと話すよ」


舞花は何も言わず、ただ黙って微笑んだ。


「……私達って恋愛ヘタクソだね。
姉妹揃って足踏みして同じような場所で躓いちゃって」


おどけたように言う舞花に、同意した。


「……大人になったらもっと上手くなるのかな?」

「お姉ちゃんは私より三つも大人でしょ」

「そういう問題じゃないの」


軽口を叩きあい、私達は顔を見合わせてクスクス笑った。


「……今日、千歳くんに会わなくていいの?」

「いいの、久し振りに妹に会えたから。
……千歳さんには舞花が泊まりに来るって伝えてあるから」


私の言葉に、舞花が嬉しそうに笑って立ち上がった。


「そっか。
じゃあ、今日はいっぱい話そうね、お姉ちゃん。
お腹すいたね!
ピザ、取らない?」

「……そうだね」


換気のために開けていた窓にはレースのカーテンが翻る。

その向こうには闇を交えた茜色の空が広がっていた。

自然が生み出す綺麗な風景に心が落ち着く。

立ち上がって窓の外を眺めていた私はクルッと舞花に向き直った。