コツン、と舞花の肩に頭を乗せる。


「……そっか」

「……私が蘭だったら良かったのにって何回も思った。
パパとママのことは大好きだし、葛城家に産まれたことを後悔したことは一度もないけど。
……蘭みたいに可愛くて、蘭みたいな家柄だったらどうだったんだろう、って……蘭は蘭でそのことで悩んでいたりするのに」


親友として最低だね、と寂しそうに舞花が微笑んだ。

その悲し気な微笑みに、妹が今日、泊まりに来た理由がわかった気がした。


蘭ちゃんは千歳さんの妹で、舞花と樹くんと同い年だ。

幼い頃からお互いに面識があるのは勿論のこと、三人は高校から学科や学部は違えど、ずっと一緒に同じ進路を辿っている。

蘭ちゃんは艶やかな真っ直ぐの黒髪、綺麗な卵型の輪郭に切れ長の瞳といったそれはもうお人形のように整った顔立ちをしている。


兄妹共に人目をひく容姿をしているのだ。

一見儚そうに見える容姿とは裏腹に蘭ちゃんはかなりハッキリとした性格をしている。

ワガママというわけではなく、人に対しても物に対しても好き嫌いが激しい。

情にもろい舞花とは真逆だ。

ただ、二人はとても仲が良い。


「……蘭ちゃんも樹くんが好きなの?」


そっと尋ねると。


「違うよ」


即答された。