舞花の言葉が胸に刺さる。

千歳さんを信じていない、わけじゃない。


信じたい。

千歳さんが贈ってくれた言葉を態度を。

あの真摯な眼差しが、熱い鼓動が嘘だとは思えない。

思いたくない。


「……そうだよね、ごめん。
……千歳さんを信じてるよ。
でもね……自信はないの」

「もうっ、お姉ちゃん!」

「違うの、聞いて」


呆れるような視線を向けてきた舞花の丸い二重の瞳を見つめながら、私は紅茶のカップを両手で包み込んだ。


「千歳さんも瑞希くんも……幼い頃から当たり前のように一緒にいるから、忘れそうになってしまうけど。
すごく大きなものを背負って生きているよね。
将来担う重責は、はかりしれないと思う。

勿論、私では想像しがたいくらいの努力もしていて……。
短い期間ながらも社会に出てみて、本来……近寄ることすらかなわない世界の人達だなって思うの。

私は普通の一般的な女子社員で。
財産も地位も知識すらないの。
将来私が傍にいることで何かしてあげられること、力になれることが何もないって、どうしても思ってしまう」

「……お姉ちゃん……」


瞳に悲哀の色を滲ませて舞花がポツリと呟く。