失礼なことをサラリと言いながら、眉間に皺をよせて考えこむ妹。


「何か理由があるのかな?
お姉ちゃんに交際を申し込まない、理由」


理由。

瑞希くんの言葉が不意に脳裏を掠めた。


『アイツにはお見合い相手がいる』


考えていることがわかったのか、舞花が私の両手をギュっと握る。


「お姉ちゃん。
決めつけちゃダメだよ。
千歳くん本人にまだ何にも聞いていないでしょ?」

「舞花、でも。
千歳さんは……将来響家を継ぐ人だし。
私は何処かの社長令嬢でもないから……」


心の奥で燻っていた事実を口にする。

口の中に悲しい苦味が広がる。


「何言ってるの。
それだったら最初からお姉ちゃんを探したりしないでしょ?
結婚を決めた相手がいるのにワザワザ素性もばれてるお姉ちゃんに気持ちを伝えたりする?
お姉ちゃんが弄ばれたって知ったら、公恵叔母さんが黙ってないよ?
有子おばさまだって、お怒りになるよ。
みすみすわかっててそんなことをする?」


問い質すように舞花が言う。


「離さないって言われたんでしょ?
お姉ちゃんは千歳くんを信じていないの?」