……どういう意味?

確めることも出来ずに立ち竦む。


……あんな瑞希くんは初めて見た。

ずっとずっと瑞希くんは私の大切な大好きなお兄ちゃんだった。


どんな時も冷静で優しくて。

穏やかで、声を荒らげることすらなくて。

穂花、と私の名前をいつも微笑んで呼んでくれた。


なのに。

あんなにも悲痛な声で。

真剣な眼差しで

力強く抱きしめられた。


……瑞希くん……。


玄関のドアが開く音がして。


「この部屋に来たの、久しぶり!
瑞希くんも帰国してたのなら教えてよ!
樹も何も言ってなかったし、ビックリしちゃった!
ずっと日本にいられるの?」


近付いてくる明るい声。


「お姉ちゃん!」


満面の笑顔を浮かべる妹の姿を見た途端。

情けなくも泣き崩れそうになった。


「……お姉ちゃん?」


私の表情に異変を感じたのか、舞花はサッと私の荷物を持ちあげた。


「帰ろ?」


優しく言われてコクン、と頷く私の手をひいて。

舞花は瑞希くんにいつもの調子で話しかけた。


「お姉ちゃん、連れて帰るね。
また今度ゆっくり会おうね、瑞希くん」

「……ああ」


すれ違う時、瑞希くんが俯く私の耳元で小さく囁いた。


「……ごめん……」


無意識に肩をビクッと揺らす。

見上げた瑞希くんの表情は泣き出しそうだった。