「……そもそも、さっきの様子じゃ穂花が自分のお手伝いさんだって千歳は気付いていないんだろ?
バレたらどうするんだ?
千歳に黙ったままで、どうやってアイツの気持ちに応えるんだ?
俺の知っている千歳は曲がったことが大嫌いな人間だ。
穂花が気付いていないだけで、見合いだって進んでいるのかもしれないんだぞ?」

「……そんな……こと」


一番痛いところを的確につかれて、血の気がひく。


「……四年前に一度会っただけだろ?
それで何がわかるんだ?
……それで、どうして好きだなんて言える?
千歳の気持ちが本物だなんてわかるのか?」

「……そ、れは」

「まさか、穂花……千歳を好きなのか……?」


信じられない、といった様に呆然と瑞希くんが私を見つめた。

私は瑞希くんを見つめ返すことしかできない。

無意識に握り合わせた両手に力がこもる。


千歳さんの笑顔が脳裏に思い浮かぶ。

私を好きだと言ってくれた優しい闇色の瞳。

大切に抱き締めてくれた腕の温もり。

重ねた唇の熱さ。


今でも思い出す度に胸が熱くなる。

千歳さんが私の名前を呼ぶ瞬間、胸がキュウッと苦しくなる。

千歳さんの綺麗な瞳に私が映る時。

泣きたくなるくらいに嬉しくなる。


こんな思い、今まで知らなかった。



「私、千歳さんが好きなの」

瑞希くんにハッキリと答えた。