瑞希くんの真剣な様子に。

瑞希くんに本当のことを伝えようと決めた。


大丈夫だから心配しないで、それだけを言って帰るつもりだったけれど。

こんなに真摯に私のことを考えてくれている瑞希くんにそれは失礼だと思った。


何より切れ者の瑞希くんだ。

小手先の言い訳では通じないことなんて嫌と言うほどわかっている。

スウ、とひとつ息を吸って、私は瑞希くんを見つめた。


「あの、ね。
瑞希くん、私。
千歳さんに四年前に一度会っているの」

「……四年前?」


瑞希くんが怪訝な表情を浮かべる。

あの日、屋上庭園で千歳さんに会ったこと、千歳さんの部屋で白いリボンを見つけたこと、千歳さんが私を探してくれていたことを話した。


……千歳さんに好きだ、と言われたことも。


そのことを伝えた瞬間。

瑞希くんの顔色が変わった。


「……でも千歳にはお見合い相手がいるんだろ……?」


俯きながら、感情が読み取れない低い声で瑞希くんが呟いた。

その様子に怯みながらも、答える。

「……で、でもお見合いもまだ決まったわけじゃないみたいだったし……」