「……最初は特に何も考えていなくて……ただ、有子おばさまの力になりたいってそれだけだったの。
三ヶ月だけって約束だったし……」

瑞希くんは何も言わない。

「小さい頃に遊んでもらって以来、千歳さんには会っていなかったし……私だってバレなかったらいいのかなって……そんなに深刻に捉えていなくて」

「……大体わかるよ、どうせ母さん達に押しきられたんだろ。
穂花はお人好しだからな」


ハア、と眼鏡を外して瑞希くんが両手で顔を覆った。


当たっているだけに反論できない。


「こんなことを穂花に言っていいものかわからないけれど……千歳の周囲には昔から常に女がいたぞ。
あいつは女にだらしないわけではないけれど、来るもの拒まず、去るもの追わずの時期が長かったからな。
人のことを言えた義理ではないけど、有子おばさんが見合いをセッティングして相手を決めようって気持ちもわかるからな」


さすが幼馴染み、よくわかっている。


「だからと言って、穂花が千歳の女性関係を探る必要はないだろ。
万が一バレたり……千歳に迫られたりしたらどうするんだ」


キッと私を睨み付けて語気を強める瑞希くん。

瑞希くんのこんな表情は初めてで、たじろぐ私に。

尚も瑞希くんは言いつのる。


「……千歳は悪いヤツじゃない。
それはわかっている。
ただ、穂花が千歳の家にずっといるなんて耐えられないんだ……先週、電話で母さんからその話を聞かされて……俺がどんな思いだったと……」