「……どうぞ」


コトリ、と磨かれたガラス製のローテーブルの上に瑞希くんがアイスカフェオレを置いてくれた。

きちんとシロップまで添えてくれている。


「……ありがとう」


カフェオレは好きだけれど甘くないと飲むことができない私。

そのことを覚えてくれている。


中学生くらいの頃、カフェオレを飲みたかったけれど、苦いから無理だと周囲に言われて。

諦めていた私にシロップやミルクを入れて飲んだらいいよ、と優しく諭してくれた人も瑞希くんだった。


そんな風に。

瑞希くんはずっと私を見守ってきてくれた。


「……お手伝いさんのこと……黙っていてごめんね。
心配をかけてしまって……」


私の向かいに腰を下ろしていた瑞希くんが口を開いた。


「いや、いいんだ。
さっきは怒鳴って悪かった。
……右腕、大丈夫か?」


眼鏡の奥の綺麗な瞳には心配そうな色が浮かんでいる。

私は黙って首を横に振る。


「本当にごめんね……腕は平気だよ、気にしないで」

「……何でこの仕事を引き受けたんだ?」


ポツリと聞かれた質問。

予想していた質問だけれど、身体が強張る。