コツコツ……、足音が遠ざかって暫くして。

田村さんが私に小さく声をかけた。


「……穂花ちゃん?
開けてもいい?」

「あ、はいっ今、開けます」


シャッと音をたててカーテンを開け放つ。


「大丈夫、響様は戻られたから。
もう出てきても見つからないわ。
スマートフォンの音がした時はビックリしたけれど、恐らく大丈夫だと思うわ」

「……すみません。
ありがとうございました」


ペコリと頭を下げる私に。


「嫌だ、穂花ちゃん、やめてちょうだい。
乗りきれて良かったわね」


安堵した表情で微笑む田村さん。


「はい、田村さんのおかげです。
私、ちょっと今から瑞希くんに会って話してきます」

「……大丈夫?
須崎様はまだお部屋にいらっしゃるとは思うけれど……」


心配そうな様子の田村さんに曖昧に頷く。


「大丈夫、です。
瑞希くんは私を傷付けたりしない人です。
……行ってきます、本当にありがとうございました」


ペコリ、ともう一度田村さんに頭を下げて、私はエレベーターで最上階の部屋に向かった。