女の子ならば、きっとみんなが憧れるはずのお化粧。
素敵な魔法をかけてくれる道具たち。
しかし、私はそうは思わない。
これから始まるのは悲惨な、そう、悲惨な私の戦いを記したものである。
一ノ瀬 紗和、ごくごく普通の大学生だ。
この、他に在りそうな自己紹介が、私の平凡さをより一層際立たせているに違いない。
まさに、その通りなのだ。
しかし私には人と違うこと、苦手なことが、ただ一つだけあった。
自分の容姿を弄ること。
何も「めんどくさい」「顔には自信があるから」とかそんなことを思っている訳では一切ない。
むしろ二つ目の台詞の逆だ。
「顔には自信が、ない」からだ。
自分で自身の評価を、下の上、だと思っている。
もし他の女の子ならば、化粧をすることで素敵になれる、そう思うことだろう。
しかし、私はそこでこう思ってしまう。
この酷い顔に化粧をすることで、化け物が生みだされてしまうのではないか、と。
ある時何の前触れもなく、友人とたまたまこんな話題になってしまった。
「そういえば、森越くんとはどうなった?」