村には大きな森があって
その中心に神様の木がある

神様の木はあらゆる災いから村を守っている

僕たちは古来より
それを信仰し、崇め、守りながら生きてきた


神様の木に選ばれた者は
木々の声が聴こえ

声が聴こえたら1週間後に神隠しに遭う

村の言い伝えでは
次の神様になると言われている


我々村人はどんなに夜の営みを重ねても
子どもを作れない


死を迎えた者は忽然と姿を消し
また、その死に際を見続けた者も消えてしまう

死者が出ると翌朝新しい村人が
村のどこかに突如現れる


成人でも過去の記憶はなく
自分の名前もわからないので

新しい村人は、村長に名前をもらい住人となる


村の名前はトウナキ村

これはこの村が生まれた時から
夕暮れになると十回鳴く鳥がいることから

トウナキ村と名付けられたらしいが

その鳥の鳴き声は聞こえても
姿を見た者は誰もいない

トウナキ鳥という

声を追った者は帰ってこない



これらの知識は僕が来てから教わった
口伝でのみ、伝えられているらしい

僕はこの村に来てから10日が経った

以前の記憶はなく
僕の年齢は20歳くらいだろうか…

村長に名前をもらい
今は" ユラ "と呼ばれている

が、どこか違和感がある